医師
大橋直樹

東京外科クリニック 理事長

日本外科学会認定外科専門医。慶応義塾大学医学部外科学教室助教を勤めた後平成27年独立。
現在は腹腔鏡手術、小児外科、乳腺外科の日帰り手術専門クリニックを運営し多くのスペシャリストに活躍の場を提供している。
成人鼠径ヘルニア手術の専門家として業績多数。

現在の仕事についた経緯は?

研修医時代に体験した手術。簡単な手術ではあったが、自分の手を動かすことで患者さんが救われていく手応えに喜びを感じることができた。特に私が専攻した腹部外科では食道から肛門まであらゆる手術を経験できた。私が駆け出しのころはちょうど開腹手術から腹腔鏡手術への移行期であり、新しい術式が次々に伝播していった。職人として魅力的な時代だったのだ。一方で腹部外科医の業務範囲は大きく、各人のライフスタイルや興味が犠牲にされていた。つまり「なんでもやらされる」のであった。私は一つの仕事に集中して経験値をあげたほうが患者さんの役に立つと考えていたので、この専門特化を妨げる仕組みも問題に感じていた。

仕事へのこだわり

勤務医を辞め、自由の身になった私は、手術の達人の噂を聞いたらすぐに手紙を書いて、教えてほしいと頼み日本中どこにでも飛んで行った。自作の練習装置を考案し寝る間も惜しんで研鑚を積んだ。誰よりもうまくなりたいと思ったらとことん追求するタイプ。やがて良い師に巡り合え、継続して師事できたことから鼠径ヘルニアや日帰り手術の専門を考えるようになった。従来は入院が当たり前と思われていた術式の中には日帰りができるものもあることに気がついた。患者さんの人生の貴重な時間を奪いたくない、元気なのに病室に拘束したくないという思いを募らせた。既存の病院組織ではこの理想を実現することができないと判断し、ゼロから組織を立ち上げるしかないと考えた。

そう思えるようになったきっかけ

腹腔鏡手術を日帰りで行う。東京で誰もできていなかったことに挑戦してみたい想いと世の人のためになるという確信がさまざまな困難に立ち向かう原動力になった。自力で組織を興すということは診療も経営も全責任を自分一人で負うことである。そのためには十分な手術技能が必要だと思った。かつての同僚や恩師が連絡をくれ、「難しい症例があるのだが、大橋、うちに来て手術してくれないか」という招聘手術の依頼を幾度もいただき、それを無事にこなすことにより信頼を得ることができ自信につなげていくことになった。
都心での開院は多くの患者さんとの出会いにつながったが、次第に独りではこなしきれなくなってきた。個人の力の限界を感じている中、切磋琢磨してきた友人が一緒にやっていこうと次々と名乗り出てくれ、瞬く間に日帰り手術の専門家集団を結成することができた。

今後の目標

現在は鼠径ヘルニアの他、乳腺や小児外科、腸疾患など各専門家が集う日帰り手術センターに発展している。多いときで1日4件の手術があり、年間500件を超える年もある。この分野は、ごく少数のプロフェッショナルがいればいい専門性とは異なり、「名医がたくさん必要」である。私と同様に腕に覚えがある医師が当クリニックで外科医としてやりがいを感じながら仕事をしてほしいと願う。私自身も手術を日々行いながら、仲間たちが安心して仕事ができるように施設内インフラの整備、安全管理体制の強化にも心血を注いでいる。マネージャーとしての仕事も案外楽しいことに気がついた。そして、名医といえども多くの患者さんに知ってもらえないとその存在が生かされない。彼らをプロデュースすることも、都心で専門特化したクリニックの代表として社会的にも重要な役割であると感じている。一人の外科医は短命なれども、その理念と技術が多くの外科医に共有され受け継がれ発展していく…この国の医療の質を守り高めていく鍵であり、この東京外科クリニックがその舞台となれればこのうえない喜びである。