院長
大坪茂

医療法人財団青葉会 東都三軒茶屋クリニック 院長

名古屋市立大学を卒業後、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター内科に入局。同院講師、三軒茶屋病院血液浄化療法科部長を経て東都三軒茶屋クリニックを開業。主に透析医療に携わり、英文誌や国際学会での発表も行っている。また、透析認定看護師センターの講師など、教育にも力を入れている。

現在の仕事についた経緯は?

自分が小学生のころ、虫垂炎になった際、医師である両親に治療してもらったことがありました。腹部を丹念に触診して診察する姿にひかれ、自分も医師の道を選びました。父親は外科医で東京大学医科学研究所にて臓器移植や人工透析の開発に携わっておりました。母親は内科医で当時まだ血液透析施設が日本にはほとんどない時代に三軒茶屋病院を開業し人工透析を立ち上げていました。そうした背景もあり、元々腎臓の分野には特に関心がありました。大学では剣道や友人と遊んでばかりしていましたが、そうした背景もあり腎臓の分野には関心があり、授業も腎臓に関しては一生懸命に聞いていました。免疫系が絡む腎炎などの講義は他の学生たちは難しいという評判でした。しかし、自分にとっては最先端の医療を学んでいるような気がして、講義を録音してよくわからないところは何度も再生して学習し、毎回の講義が楽しみでした。先生は論理的な考えを重視しておられ、診察、検査より鑑別診断をあげ診断に至るプロセスを学びました。尊敬する恩師先生との出会いもあり、腎臓内科を自分の一生の専門としたいと思いました。

仕事へのこだわり

私どもの基本理念は「医療と福祉、教育を通じて地域社会に奉仕する」です。ここで、私ども理念にもつながる、アートという言葉を紹介したいと思います。アートは古代ギリシアの医者、ヒポクラテスの「Art is long, life is short.」という言葉に登場します。アートというと現在は技術や芸術という意味で使用しています。しかし、もともとはアートには医術という意味が込められており、ヒポクラテスのArt is long, life is short.には、医術は学ぶことが膨大であるという意味で使用されていました。現在では少年老い易く学成り難しとして、学ぶことが膨大であることや、転じて芸術作品の寿命は長いが人生は短いという意味でも使用されています。

数年前の日本内科学会総会で、医学・看護学の発展に多大な貢献をされている日野原重明先生より「医のアート」に関する特別講演がありました。その中で、「近代医学の父」と呼ばれるウィリアム・オスラーの、「医学は科学に基づくアートである」という言葉が紹介されました。古代の医学には、科学はほとんど存在せず、医術は個人のパフォーマンスとして提供されていました。それこそが癒しのアートでした。近代医学においては科学が重要視され、ともすると延命を第一の目標とした冷たい医療になりがちですが、古代よりのアート、癒しのわざ、暖かなケア、命の質を大切にしなければならないという教えでした。
私どもの日本医療はどの国も経験したことのない、超高齢化社会、多死社会を迎え、大きな変革が求められています。いままでの疾患を対象とした、ともすると人工呼吸器などのつめたい延命医療から、患者さん個々の人生を対象としたコニュミケーションが見直されています。根本治療より対症療法へ、キュアからケアへと、心のこもった医療への改革が求められています。私どもも、エビデンスに基づいた治療を基本に最新の治療も取り入れつつ、患者様の人生、生き方を尊重し古代よりの医のアートを大切にすることにより、地域の医療に奉仕したいと思います。

今後の目標

オバマ大統領の昨年の年頭のあいさつで「プレシジョン・メディスン計画」という言葉がありました。遺伝子レベルでの個々の違いを考慮した薬剤の選択が癌の分野などで研究されています。一般内科診療や透析療法の治療においても画一した治療ではなく、個々の患者さんのそれぞれ今まで歩んできた人生の違いを考慮したアートが大切ではないかと感じています。そんな医療を「適確化医療」と名付けております。エビデンスに基づいた治療を基本に、最新の治療も取り入れながら、皆さまと話しあい「適確化医療」が実現できればいいなと思っています。