日本大学医学部 消化器外科教授
高山忠利

1980年に日本大学の医学部を卒業。4年後には同大学院で外科学を修了し、医学博士を取得する。国立がんセンター中央病院外科医長や東京大学医学部肝胆膵移植外科助教授を経験し、2001年から現職、2014年には医学部長に就任する。1994年、高山術式と呼ばれる肝尾状葉単独全切除術を世界で初めて開発。約4,000例の肝切除・肝移植を執刀。

私の父は若かりし頃医師を志していましたが、家業を継ぐために諦めざるを得なかったと聞いていました。父は、長男である私にその夢を託し、私もいつしか医師を目指すようになり医学部へ進学しました。将来は、実家のそばでクリニックを開業しようと思っていましたが、20代の頃恩師と出会い、世界初の肝臓手術に感銘を受け、その後私も肝臓外科医の道を進むことになりました。

病気に休日はない

全国の肝がん患者さんが私の元に集まります。それは、患者さんたちにとっては人生における重要なイベントの一つです。そのことを絶対に忘れず、それぞれの症例に真摯に向き合って一人一人にどのような治療法が最適なのかを検討します。病気が休んでくれる日なんてありません。ですから、一人でも多くの方をがんから救うためにも患者さんのことを365日考え、元気な状態で家に帰ってもらうことが医師としての私の使命であると考えています。私の元には、セカンドオピニオンとしてくる方も多くいらっしゃいます。地元の病院で「切除できない」、「治療法はない」と断られてしまった方達です。そんな方達の中には、確かに治療が難しい方も多いです。しかし、病気に対しての丁寧な説明がなかったり、医師の勉強不足が原因で治療法がないとされている場合もあります。がんを治療する方法は切除だけではなく、カテーテル治療や抗がん剤治療などもあります。相談にこられる患者さんご本人やご家族の目を見て会話する中で、私を頼りにしてくれていることを感じ、彼らのために何ができるのかを日々自問自答しています。

22年前に勤めていた国立がんセンター中央病院で、ある一人の難しい症例の患者さんに出会いました。その方のがんは肝臓の一番深い部分である尾状葉に位置しているため、前面から目視することができませんでした。そのため、尾状葉単独での切除は困難であり、為す術がありませんでした。しかし、一人でも多くの患者さんをがんから救い出すことが外科医としての責務だと考え、諦めることなく尾状葉にアプローチした結果、無事に単独切除は成功しました。不安はもちろんありましたが、それまでのたくさんの経験や努力を信じて決断しました。後日、その手術に関する論文を発表しました。前代未聞のその術式は、「高山術式(尾状葉単独全切除術)」と名付けられました。大きな決断をして前進していくことで初めて、医療の革新は起こるのです。医学部長という立場で考える今後の目標は、患者さんが質の高い医療を安心して受けることができる大学にしていくことです。それを叶えるためには質の高い医師が必要です。ですから、患者さんのことを考えるとともに、医師が働きやすくてどんどん勉強できる環境もつくっていかなければいけないと考えています。私個人としては、目の前にいる患者さん一人一人に外科医として全力を尽くすためにコンディションを整え、一人でも多くの人に笑顔になってもらいたいと思います。日常生活の中で手術のことを考えるのが当たり前になっているのでなかなか難しいことではありますが、いつか手術のことを一切忘れて羽を伸ばしてみたいですね。